コラム April 05, 2020

“睡眠薬を飲むと認知症になる”は本当?噂の元である論文を検証!

不眠症状を改善する睡眠薬は、一部の週刊誌などで認知症の原因となると報じられています。
このような記事を見ると、みなさんも睡眠薬は怖いものと敬遠してしまうと思いますが、果たして事実なのでしょうか?
各雑誌が参考にしている論文を、本記事で検証してみました。

論文の大きな問題点は被験者の年齢にある?

フランスの医療機関で行なわれた研究によると、睡眠薬を服用することで認知症発症率が1.5倍にも上がるという結果が出たとのこと。
これが元になって、一時はテレビでも睡眠薬の危険が叫ばれるようになりました。
しかし、論文をよく見てみると、いくつかの欠点があることに気づきます。

まず挙げられるのが、被験者の年齢が認知症を引き起こしやすい65才以上であること。
65才ぐらいになると、睡眠薬を飲んでいなくても認知症になるリスクが高まり、その割合は2012年時点で5人に1人にのぼります(内閣府調べ)。



さらに、研究で使用された睡眠薬の成分が被験者すべて同じではなく、中にはほかの薬も服用していた被験者もいるとのこと。
これだけのデータでは、「睡眠薬の服用で認知症になる」とは言い切れないですね。

不眠の早期対処が認知症予防につながる

確かに、薬には必ず副作用が発生しますので、カラダへのダメージがゼロではありません。
しかし、不眠症が続くと脳内に「アミロイドβ」という疲労物質が蓄積していき、これが脳細胞を破壊して認知症を招くリスクが高まることは事実です。
ですから、眠れないとお悩みの方は、なるべく早い段階で心療内科を受診し、生活習慣の改善ポイントやストレス発散法などのアドバイスを受けるとともに、症状に応じた薬の服用も検討するべきでしょう。



最近の睡眠薬は、ひと昔前の薬より安全性が高まっています。
それに、睡眠薬を飲み始めた方の80%は、3か月程度で症状が改善に向かい、薬が不要になっているというデータもあります。
ひとりで苦しまず、医師と一緒に健康的な生活を取り戻していきましょう。

(監修:精神科医・内科医 豊田早苗医師)